目次
矯正治療と期間
矯正治療は「弱い力を長時間かけ続けること」で歯を動かすので、どうしても治療に時間がかかります。なんでも素早く手に入る現代社会においては、1年〜2年という期間はとても長く感じることでしょう。
でも少し見方を変えてみてください。一度歯並びを整えれば、その先ずっときれいな歯並びで生活することができます。そう考えてみると、一生のうちの数年はそれほど大きなものではないかもしれません。また矯正装置は以前のものと比べ装着時の違和感や辛さがかなり緩和されてきています。
こちらでは、矯正の治療期間と、治療期間を少しでも短くするために、天神歯科・矯正歯科で行なっている取り組みについてお話ししていきます。
目次
矯正治療の治療期間はどのくらい?
矯正治療の期間は1年〜2年半程度です。ただし、症状によって治療期間が異なるので、あくまで平均的な治療期間だとお考えください。
部分矯正は治療期間が短い?
部分矯正は前歯だけを対象にした矯正治療プランです。歯を動かす距離が短いため、治療期間は数カ月〜1年程度となります。すべての人に適用できるわけではなく、かみ合わせ治療の必要が無い、軽微な症状に向いている治療です。
裏側矯正は表側矯正よりも時間がかかる?
「裏側矯正は時間がかかる」という話を聞いたことがある方がいらっしゃるかもしれません。以前はそのように考えられていたのですが、現在では裏側矯正でも唇側矯正(表側矯正・ラビアル矯正)と治療期間の差はほとんどありません。治療の進め方、ブラケットの進化など様々な点で改良が進み、期間の差は無くなってきています。
マウスピース型矯正の治療期間は?
マウスピース型矯正(インビザライン)でも矯正治療期間に大きな違いはありませんが、症状によっては裏側矯正でないと対応できないもの、または時間がかかりすぎてしまうものもあります。
通院の頻度について
矯正治療中には実際にどのくらいの間隔で通院するのか、ということも治療前に気になる点だと思います。これは治療の種類によって異なります。裏側矯正ではおよそ 3 週間〜 1 ヶ月に 1 回、マウスピース型矯正では 1 ヶ月〜 3 ヶ月に 1 回となります。
ただし、治療開始後すぐは、装置の調整以外に、ディスキングやアタッチメントの接着、アンカースクリュー の設置などを行うこともあるので、上記よりも通院頻度が多くなる場合があります。
マウスピース型矯正は患者さんご自身で付け替えていくため、通院頻度が少ないことが特徴です。
なぜ矯正治療には時間がかかるのか?
矯正治療は時間のかかるもの、という認識はみなさんお持ちですが、なぜ時間がかかるかご存知でしょうか?
歯がうごく仕組みとは?
矯正治療では矯正装置を使って歯を動かして行きますが、もう少し詳しくお話しすると、歯に圧力を加えることで、歯が埋まっている歯槽骨の変化(歯槽骨の再構築)を促し、その結果として歯が動くというのが矯正の原理です。
骨は固く、成長が止まった後は変化しないように感じますが、実は人の体では一定期間で古い骨が新しい骨に置き換わる「骨代謝」が常に行われています。
矯正治療ではこの骨代謝のメカニズムを人工的に引き起こしていきます。歯に一定の力を加えることで、力が加わった側(歯が押さえつけられた側)の歯槽骨で破骨細胞が骨を分解・吸収します。
一方、圧力がかけられた方とは反対側の歯槽骨では、隙間を埋めるようにして骨芽細胞が骨を作っていきます。
厳密に言うと歯と歯槽骨の間には「歯根膜」と呼ばれる膜(靭帯)が存在し、これが圧迫されたり、伸ばされたりすることで、破骨細胞・骨芽細胞の働きが活発化するのですが、矯正治療とはこのような骨の変化(リモデリング)を促す治療のため、時間がかかります。
歯を大きく動かすのが難しい理由
矯正治療に時間がかかるのには他の要因もあります。一般的な矯正装置は歯に矯正装置を付けますが、動かしたい歯に引っ張る力をかけたとき、固定源となるべき奥歯にも同時に力がかかり、両者の間で「引っ張りっこ」をするような状態になります。
そのため、前歯を下げたいのに、奥歯が前に移動してきたり、傾いてしまったり…ということが生じます。
とはいえ、裏側矯正では、歯の裏側に装置をつけることで、このような問題が起こりにくくなりましたし、歯科矯正用アンカースクリューは歯槽骨に小さなネジを埋め込み、そこを固定源として歯を引っ張るので、歯を引っ張りやすく、結果として治療期間短縮を可能にしています。
矯正治療期間を短くするために
矯正装置の作製期間
裏側矯正
見落としがちなのは、矯正装置を作製する期間です。裏側矯正・マウスピース型矯正どちらも、患者さんひとりひとりの治療に合ったオーダーメイドの矯正装置を使用します。そのため、矯正治療の検査後、すぐ治療ができるというわけではありません。
専属の技工所での装置作製
天神歯科・矯正歯科ではグループ内に技工所を持ち、裏側矯正装置については、その技工所で作製を行っています。患者さまの歯型データや治療計画は技工所とデジタルで共有され、一連の流れがシステム化されているので、装置の作製に無駄な時間がありません。
またドクターと技工士の距離が近いため、わずかな調整の対応や相談が可能であり、結果として治療の進度や質に良い影響を与えています。
マウスピース型矯正装置のお渡し
一方、マウスピース型矯正(インビザライン)はマウスピースをメーカーに発注する形で作製を行っています。ISO取得の海外の専門工場にて製造のうえ、クリニックに届くのは型取り後およそ1ヶ月〜2ヶ月となります。
セルフライゲーションブラケットの使用
ワイヤーとブラケットによる矯正治療(表側矯正・裏側矯正)では、従来のブラケットよりも余分な矯正力がかからないタイプのブラケットを、基本的に使用しています。「ローフォース・ローフリクション(弱い矯正力と弱い摩擦力)」の考え方のもと開発されたセルフライゲーションブラケットは、歯周組織に負担をかけない程度の矯正力をかけていくことで、結果的に理想的な歯の移動スピードを実現できます。
矯正用アンカースクリューの利用
先程も少し触れた、歯科矯正用アンカースクリューですが、アンカースクリュー登場以前では、外科的手術やヘッドギアの装着が必要であった症状でも、アンカースクリューを用いることで、通常の矯正装置で十分に対応できるようになってきています。
歯への矯正力をかけるための固定源が確保できることで、ある程度の力をかけて歯を動かせるので、歯の動きが早く、症例によっては期間の短縮に繋がります。
設置の処置を素早く
治療期間の短縮はもちろんですが、一回一回の処置の時間も短いに越したことはありません。
裏側矯正はインダイレクトボンディングで設置
裏側矯正(裏側矯正)では、歯の裏側に装置をつけるため、ブラケットの取りつけの難易度が表側よりも高くなります。歯の裏側は作業がしにくい上、凸凹が大きく、治療計画によって決められた所定の位置にブラケットを装着していくのはなかなか技術のいる作業です。
この作業を素早く、的確に行うため、当院では「インダイレクトボンディング」と呼ばれる方法をとっています。
インダイレクトボンディングとは
インダイレクトボンディングとは、模型を使用してあらかじめ位置を決めたブラケットを、患者さまの歯型にピタリと合うトレーに移し、そのトレーを使って歯に設置していきます。イメージとしてはスタンプのようなものです。
治療計画で決めた場所へブラケットが正確に付くか付かないかは、治療の精度、果ては治療のスピードにも関わってくる大切な部分のため、天神歯科・矯正歯科ではインダイレクトボンディング法を用いて装置の設置を行なっています。
また、セルフライゲーションタイプのブラケットを用いることで、結索(ワイヤーとブラケットを結びつけること)を行う必要がないので、裏側矯正装置の装着は以前よりも短時間で済みます。
マウスピース型矯正はご自身で
装置の装着に関していうと、マウスピースが簡単です。マウスピースは患者さまご自身で取り外しができるので、付け替えも自宅で行うことができます。
保定期間について
矯正治療は 1 年〜 2 年半程度の期間だと、述べましたが、治療後すぐの歯周組織は不安定であり、ともすると歯がもとの位置にもどろうとします(後戻り)。矯正治療によって揃えた歯を保つためには、保定装置(リテーナー)を付けて後戻りを防ぐ「保定期間」が必要となります。
保定期間はどのくらい?
保定期間は矯正治療にかかった期間 + 半年程度が理想的です。当院のリテーナーは主にマウスピース型ですので、保定期間中は装着時間を守るようにしましょう。
少し長く感じるかもしれませんが、リテーナーは歯を動かしているわけではないので、矯正力は無く、装着していても痛み等はありません。また、保定期間中、終日マウスピースを付けていなくてはならないという訳ではなく、歯周組織の安定を見ながら、装着時間をすこしずつ短くしていきます。
骨代謝とは?
骨代謝とは古くなった骨を破骨細胞と呼ばれる細胞が分解・吸収し(骨吸収)、それと同時に骨芽細胞と呼ばれる細胞が新しく骨を作っていく(骨造成)一連のメカニズムです。