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矯正治療で歯を抜かなくても大丈夫?

矯正治療において歯を抜くケースは珍しくありませんが、近年では「健康な歯を抜かないほうが良い」という考えを聞くこともあります。しかし、歯並びの状態によっては、抜歯が必要とされることがあります。ここでは、矯正治療における抜歯の必要性について、実際のところをわかりやすく解説します。
椅子取りゲームに例えられる歯のスペース不足

歯は歯槽骨(しそうこつ)の上に並んでいますが、歯が大きかったり本数が多かったりすると、歯を収めるスペースが足りなくなることがあります。この現象は、椅子取りゲームのような状況に例えられることがあります。椅子がスペースを表し、椅子に座る人が歯とされます。抜歯を避ける矯正は「椅子(スペース)を増やす」ようなイメージであり、抜歯矯正は「座る人(歯)を減らす」イメージとして説明されます。
矯正治療における抜歯(便宜抜歯)の目的
矯正治療で抜歯が行われる目的は、歯並びや噛み合わせを改善し、より健康的で機能的な口元を作ることです。具体的には、以下の目的が挙げられます。
歯並びを整えるため
歯の大きさと顎のスペースのバランスが悪い場合、歯並びが乱れてしまうことがあります。例えば、歯が大きすぎたり本数が多すぎる場合、抜歯を行うことで、歯並びを整えることが可能になります。
口元のバランスを調整するため 上顎の前歯が突出している「出っ歯」
上顎の前歯が突出している「出っ歯」や、上下の歯が前に出ている「口ゴボ」といった問題は、見た目や顔立ちに影響を与えます。このような場合、口元や横顔のバランスを整えるために、歯を後ろに移動させるスペースを作り出すために抜歯が有効な手段となることがあります。
噛み合わせの調整
噛み合わせにずれがある場合、歯並びだけでなく、噛み合わせを正しい位置に調整することも重要です。歯が適切に噛み合っていないと、食事や発音に支障をきたすことがあり、顎に過度な負担がかかります。抜歯によって歯の位置を調整し、理想的な噛み合わせを作ることで、食べ物をしっかり噛めるようになり、顎の健康や機能も改善され、口腔内全体の機能が向上することが期待されます。
歯を抜かずにスペースを増やす方法
抜歯を行わずにスペースを作るには、主に「奥歯を後方へ移動させる方法」、「歯並び全体を外側に広げる方法」、「歯の側面をわずかに削る方法」の3つがあります。それぞれの方法には特徴があり、患者様の状態に応じて適した選択肢が異なります。以下では、これらの方法について詳しく解説します。
方法1:奥歯を後方へ移動させる

奥歯をさらに奥へ移動させることで、歯並びを調整するためのスペースを作ります。歯科矯正用アンカースクリューの登場により以前は難しいとされていた奥への移動が可能になりました。歯茎や口蓋に埋め込んだアンカースクリューを固定源として奥へ引き込みます。その際、親知らずがあるとトラブルを起こしやすいため、基本的に抜歯します。
方法2:歯並び全体を外側に広げる

歯槽骨(歯を支えている骨)の範囲内で歯のアーチの幅をやや外側に押し広げます。広げる量はごくわずかなので、顔のサイズが大きくなることはありません。ただし、生み出せるスペースも少ないため、歯並びによっては適さない場合もあります。
方法3:歯の側面をわずかに削る

歯の表面にあるエナメル質をわずかに削って隙間を作ることで、歯が並ぶためのスペース不足を解消する方法です。例えば、1本あたり0.3mm削ると、歯2本の間にできるスペースは0.6mmとなります。削った側面にはフッ素を塗布して、虫歯の予防をします。この方法は矯正でよく活用される微調整で、IPRやディスキングと呼ばれる処置です。
歯を抜かない矯正・対応できるケース
軽度の歯並びの乱れ
ガタつきやねじれが軽度であり、歯を動かす量が少ない場合は、歯を残したまま矯正することが可能です。軽度のガタガタであれば、矯正装置を使って歯列を広げることで歯をきれいに並べることができます。
スペースの調整できる
歯並びを整えるためのスペース不足はよくある課題ですが、奥歯の後方移動やディスキング(歯の表面をわずかに削る技術)により、スペースを確保できる場合は抜歯は不要です。
顎の成長が期待できる
成長期の子どもなど、顎の発育を利用して、顎の成長を促す装置を併用することで抜歯を避けて歯並びを改善できる可能性があります。大人になってからでは顎の成長が止まってしまうため、早期の相談が重要となります。
歯の傾きを調整できる
歯の傾きが原因でスペースが不足している場合は、歯の向きを調整するだけで歯並びを整えられるケースもあります。
前歯の突出が少ない
出っ歯や口元の突出感が強くない場合、抜歯をしなくてもバランスの良い仕上がりが期待できます。
歯を抜かないことのメリット・デメリットを解説
メリット

①健康な歯を残せる
歯を抜かない治療は、健康な歯を残せることや、歯の本数を維持したいと考える方にとって大きな利点です。しかし、場合によっては抜歯しない治療では十分な間隔が確保できないことがあります。
②治療費や治療期間がかからない
歯を抜かない治療法では、抜歯に伴う費用や治療期間が省略されるため、その分の治療費が抑えられ、治療期間も短縮されます。
デメリット
①歯列がきれいに並ばない
スペースが足りないまま矯正治療を行うと、歯が並びきらずに、歯並びの乱れが残ることがあります。理想的な仕上がりを目指すためには、抜歯と非抜歯の選択が矯正治療の成果にどのように関わるか検討し、歯科医師の診断をもとに治療計画をしっかり確認することが大切です。
②噛み合わせが悪化する
抜歯をせずに歯を強引に動かすと、上下の噛み合わせがうまく合わなくなることがあります。
③歯肉退縮のリスク
非抜歯で歯列を整える場合、歯茎に負担がかかることがあり、歯肉が下がるリスクが高まります。歯茎が下がると、見た目が悪くなることや、知覚過敏や虫歯のリスクが高まることがあります。
④治療後の後戻り
スペースの余裕がないまま歯を並べると、矯正後に歯が元の位置に戻ろうとする力が強くなり、後戻りのリスクが高まることがあります。
⑤横顔(Eライン)を整えるには限界がある
抜歯なしで矯正を行うと、歯の後退が不十分になり、口元の突出感が残る可能性があります。特に出っ歯や口ゴボの改善を希望する場合、横顔のEライン(理想的な口元のバランス)の実現が難しくなります。結果的に、歯並びは整っても口元の突出感が大きく変わらないことがあります。(矯正治療とEラインについて)
精密検査をもとにした治療計画が重要
矯正治療を行う際、歯並びや噛み合わせの問題を解決するためには、まず患者様の口腔内の状態を正確に把握することが重要です。これには、歯の位置、顎の骨の形状、顔のバランス、歯の大きさや歯列全体の状態など、詳しい分析を行うために精密検査が欠かせません。この検査の結果をもとに、歯科医師は治療計画を立て、抜歯するかどうかを判断します。歯の並びが大きく乱れている場合は、抜歯を選択することがあります。一方で、軽度の歯列不正や、少しの調整で歯並びを整えることができそうな場合には、歯を残す選択肢を取ることができます。また、噛み合わせや顔のバランスや、将来的な歯の健康を考慮して抜歯する、しないを決めることも重要です。治療計画は個々の患者様に最適な方法を選ぶことが最も大切であり、どの方法が適しているかは、歯科医師と相談しながら慎重に選ぶことが重要です。
抜歯が必要になる矯正治療のケース
①歯のサイズと顎のスペースが足りない場合
顎の大きさに対して歯が大きいと、歯がきれいに並ぶスペースが不足し、重なり合ってしまうことがあります。このような場合、抜歯をすることでスペースを作り、歯並びを整えることが可能になります。
②出っ歯(上顎前突)
前歯が前方に突出している場合、後方に引き込むためのスペースを作り、歯を後退させることで改善できます。特に、口元の突出感を抑えたい場合には、抜歯矯正が有効です。
③受け口(下顎前突)
下の歯が上の歯よりも前に出ている受け口(反対咬合)の場合、歯を適切な位置に動かすために抜歯を行うことがあります。ただし、骨格の問題が大きい場合には、外科矯正が必要になることもあります。
④噛み合わせのバランスを整える場合
歯の本数や配置が噛み合わせに悪影響を及ぼしている場合、抜歯によってバランスを調整することがあります。例えば、片側だけ歯が多く残っていると噛み合わせのズレが生じるため、抜歯で調整することが可能です。
矯正治療を考える時に一番大切なこと
歯列矯正において最も重要なのは、「噛み合わせの機能が向上すること」や「整った歯並びで自信を持って笑えるようになること」です。抜歯を避けることばかりに意識が向いてしまうと、本来の目的を見失い、結果として理想的な仕上がりが得られない可能性があります。そのため、治療方針を決める際には、信頼できるクリニックを選び、ドクターと十分に相談し、自身の歯並びや口元の状態に合った最適な治療方法を選ぶことが大切です。
精度の高い精密検査を行うためのデジタル設備を整えています

天神キュア矯正歯科では、「抜歯する矯正が良い」「抜歯しない矯正が良い」といった考え方ではなく、「患者様にとって最適な治療は何か」を重視しています。その実現のために、デジタル設備を活用した精密検査とシミュレーションシステムを導入しています。歯科用3DCTを使用することで、歯だけでなく顎の構造を立体的に把握でき、より精密な治療計画とリスク管理が可能になります。また、3Dスキャニングカメラにより歯型をデジタルデータ化し、コンピューター上で歯の動きをシミュレーションできます。これにより、患者様と治療の進行を共有しながら、より納得のいく矯正治療を進められます。
歯を「抜く」・「抜かない」よりも自分に必要な治療方法を選びましょう

私たち天神キュア矯正歯科では、できる限り痛みを抑え、体への負担を軽減する矯正治療(低侵襲治療)にこだわっています。そのため、精密な検査と診断を重視し、一人ひとりに適した治療計画を立案しています。患者さまの希望や目的を丁寧に伺い、最適な治療法をご提案いたします。私たち天神キュア矯正歯科では、単に「抜歯あり・なし」で判断するのではなく、「患者様にとって最善の治療とは何か」を第一に考えています。矯正に関するお悩みがある方は、ぜひ一度カウンセリングにお越しください。不安や疑問に誠実にお答えいたします。