2020年1月。我が国に最初の新型コロナウイルス感染者が確認されてから、
マスク生活が4年目に突入しました。
私は医療従事者であるため普段からマスクをすることに抵抗はありませんでしたが、
仕事が終われば外したいというのが正直な気持ちでした(-_-;)
マスク生活が続くなか、初対面の方がマスクを外すところをみて初めてこんな顔の人だったんだ!
とイメージと違ったことが何度もありました( ゚Д゚)
それだけ口元で顔の印象が変わるのだと知り、口元のトレーニングを始めたのもこの頃です。
人は初対面の時にまず顔に目がいきます。
そして、顔のパーツのなかでも男性は4位、女性は3位に口元が挙げられています。
ちなみに1位は目であることはみなさん納得の結果だと思いますが、
先ほどのマスクを外した時の話から、目元だけで印象は決まらないということです。
そこで今回は矯正治療のなかでも比較的馴染みの深い、受け口について話していきたいと思います!!
目次
受け口とはどんな状態のこと?
受け口と聞いてみなさんはどんな口元を想像するでしょうか?
ある方々にこの質問をしてみたところ、しゃくれと答えた方が何人かいらっしゃいました。
しかし、受け口としゃくれは同じ状態をさす訳ではありません。
まず、受け口は「反対咬合」とも言われ、本来下の前歯よりも上の前歯の方が前に出ているのに対し、受け口は下の前歯の方が前に出てしまっている状態のことをさします。
では、しゃくれとはどのような状態かというと、見た目でわかるくらい下顎が上顎よりも前に出ている状態や顎の長さが原因で下顎が出て見える場合をいいます。
ただ、下の前歯が上の歯よりも出ていれば自ずと下唇が前に突出し、
しゃくれに似た状態の輪郭になるため、同じものだと解釈している方が多いのだと考えられます。
逆に、下顎の過成長や上顎の劣成長など骨格の問題で下の歯が出てしまい受け口となる例もあります。
ここでひとつ、疑問に思う方がいらっしゃるかもしれません。
前歯は全部で上6本、下6本の計12本になります。この歯のうち1本でも反対になっていたら受け口となってしまうのか?(。´・ω・)?
答えは「いいえ」です!
反対咬合や受け口と診断されるのは4本の歯が反対に噛み合っている場合になり、1〜3本であれば交叉咬合やクロスバイトと表現されます。
ただ、反対に噛み合っている歯が何本であれ、
傾いたまま生えている状態で歯を使い続けることは良いことではありません(;´・ω・)
その影響について次の章でご説明していきます。
受け口のままでいるとどうなる?
受け口や交叉咬合とは、歯と歯が本来とは反対の状態で噛み合わせているということは
お分かりいただけたと思います。
では、そのままの状態で食事や会話、人生を送り続けるとどのようなことが起こるかいくつか挙げていきたいと思います。
虫歯や歯周病のリスク
歯が重なっていたり、傾いて生えていればそれだけ歯ブラシを当てることが難しくなります。
そのため、磨き残しが原因で起こる虫歯や歯周病のリスクは高くなります。
また、過度な力が加わることでも歯周病になります(-_-;)
歯列矯正で歯に与える力は意外と弱く、数グラム〜数十グラムとされているのに対し、
歯軋りや食いしばりで瞬時に加わる力は最大で自分の体重の倍ほどであるとされています。
それだけの力がかかれば、歯茎や歯周組織に影響を与えてもおかしくありません( ;∀;)
症状の悪化
まだ小さいからといって受け口を放置しておくと、成長と共に受け口が目立つようになってきます。
下顎の成長は男の子が18歳、女の子が14歳まで成長し発育します。
そのため、急激に顎が成長すると気づかぬうちに受け口が目立つようになってしまうのです。
小さな我が子に矯正治療をさせるのは勇気が入ります。
しかし、顎の成長過程で症状が軽いうちに治療に踏み切ることは、
本人の負担も大きく減らすことができます。
うまく噛めない
食事の時、人は奥歯を使って食べ物を噛んで飲み込みます。
ですが、受け口の場合全体の噛み合わせのバランスが悪くうまく噛むことができません(-_-;)
そのため、食べるのに時間がかかったり、
くちゃくちゃと音をたてて食べるといったことがみられます。
さらに、しっかり噛まずに飲み込んでしまうため胃への負担もかかってしまいます。
発音が難しくなる
話していることを何度も聞き返されたり、自分でもうまく発音することができないと感じている場合、舌が短かったり、口周りの筋力不足や舌の低位置などが挙げられます。
そして、受け口もまた原因のひとつです。
特に「サ行」や「タ行」のように舌が前歯に触れることによって出せる発音が苦手とされます。
心への影響
人は周りの人とつい比べてしまう性質があります。
誰ひとりとして同じ人間はいませんが、周りと違うことを嫌う傾向があります。
特に思春期は自分の容姿を極端に気にしてしまうことから、
自分の顎が人より出ていることで消極的になったり外へ出ることを拒否してしまうこともあります。
もともとの性格をかき消して、見た目が性格をつくりあげてしまうのです。
上の前歯を出せば受け口は治せる?
では、受け口を治すためには上の前歯を出すのか、
下の前歯を下げるのかどちらによって改善できるのか疑問になると思います。
結論からいえば、上の前歯を前に出すことで受け口を治すことはできます。
ただし、人間の美しい横顔としてエステティックラインといわれるものがあります。
これは、顎と鼻先を線で結んだラインのことであり、
横から顔を見たときにこのラインの内側に唇があることを最も美しいとしています。
そのため、この美しさの指標をもとに「上の歯を前に出す」「下の歯を後ろに下げる」
もしくはその両方を行うことで受け口を治すことが可能になります。
しかし、この方法が行えるのは受け口の原因が歯である場合になります(._.)
受け口の治療法
それでは実際に、受け口の治療法にはどんなものがあるのかみていきます。
実は、子供と大人では治療法が違ってくるため分けて説明していきます(‘ω’)ノ
子供(6歳〜16歳前後)
[骨格が問題の場合]
6歳など早い段階で治療を開始する場合、顎の成長が発育途中であるため上顎の成長を促したり、
下顎の成長を抑制する装置を使います。
上顎の成長を促す場合、ムーシールドといわれるマウスピースや、前方牽引装置というゴムを使って前に牽引します。
下顎を抑制する場合、チンキャップという装置を顔の外側から覆いかぶせ下顎を後ろに引っ張ります。
1日10〜12時間の装着が理想とされています。
[歯並びが問題の場合]
歯並びの治療を開始するのが最も多いとされるのは、
前歯の永久歯が生えそろう7歳〜8歳とされています。
受け口の治療のため、下の歯を後ろに引く場合はリップバンパーと呼ばれる取り外しが可能な装置を使います。
奥歯にバンドを装着し、下唇までチューブを引っ張って後ろに下げる力を与えます。
反対に、上の歯を前に押し出したい場合はリンガルアーチと呼ばれる装置を使います。
左右奥歯にステンレス製のリングをはめて、
そこから金属ワイヤーを前歯の裏側に当てて前に押します。こちらも取り外しが可能となっています。また、症状が軽度の場合はマウスピースをはめることによって動かすことも可能です。
大人
大人になってから受け口を治したい場合、基本的に歯列矯正による治療になります。
顎の成長は上顎が6〜8歳、下顎が11〜13歳で完了するため、
顎へのアプローチでは受け口の改善は難しくなります。
代表的な治療法が以下の3つになります。
[マウスピース矯正]
矯正装置として目立ちにくいというのが最大のメリットである、マウスピース型の矯正法です。
数週間ごとに形の違うマウスピースを装着することで、徐々に歯を移動させます。
ただし、症状が重度の場合はマウスピースだけで改善することは難しく、
ワイヤー治療や外科手術を合わせて行う場合もあります。
[ ワイヤー矯正]
矯正治療のなかでも主流な固定式のワイヤーを使った治療法です。
自分で取り外して管理する煩わしさはありませんが、
歯の表面にワイヤーを通すため周りからみて矯正中であることは隠しきれません;つД`)
どうしても目立つことが気になる場合は、歯の裏側にワイヤーを通すこともできます。
しかし、表側よりも裏側に通す方が高度な技術が必要になるため、費用が数万円高くなります(-_-;)
[外科手術]
受け口である原因が歯並びだけではなく顎骨の形に問題がある場合、
ワイヤー治療と合わせて外科手術を行います。
全身麻酔をかけ、下顎を後ろに下げるもしくは上顎を前に出す治療を行います。
わかりやすく言うと、一度骨折させた骨を理想の位置に移動させて固定します。
そして、固定に使用したボルトを1年後くらいに外すため、手術は2回行います。
外科手術になる場合、顎の骨の位置異常として「顎変形症」と診断がつくため保険適用になるメリットがあります。
ただし、全身麻酔での手術は入院が必要になり本人にも負担がかかるため、
手術を行うタイミングや時期をしっかり話し合うことが必要です!!
このように、受け口は症状や年齢によって治療法が変わってきます!
ただ、ひとつ言えることは、受け口に気づいたら早めに歯科医師に相談することをおすすめします。
1〜2歳で受け口の症状が見られた場合、約半数が自然に改善したとされています。
半分は受け口がそのまま成長していくことを考えるとかなりの確率であると思います。
周りに打ち明けるのは勇気が入りますが、コンプレックスは誰もがもっています。
そんな思い悩む気持ちも、私たちに預けていただけたらと思います(^o^)/