治療方法

歯は削るだけで並ぶ?IPRについて解説


「抜歯は避けたい」「削るだけで治したい」というご相談は珍しくありません。
歯を抜かずに歯並びを整える方法の一つに、歯の側面をやすりで削ってスペースを作る「IPR(ディスキング)」という処置があります。
しかし、IPRだけで対応できるケースには限界があり、無理に非抜歯で進めると、かえって口元が突出してしまったり、歯ぐきが下がってしまったりするリスクも。
そこで本記事では、歯を削る矯正(IPR)について解説します。

抜歯ではなく削るだけで治せますか?

疑問 なぜ 
「歯並びのガタガタが気になります。でも、抜歯にはどうしても抵抗があって…。歯を少し削るだけで並べることは可能でしょうか?」
カウンセリングでは、患者様からこのようなご質問をいただくことがよくあります。
まずお伝えしたいのは、当院では可能な限り歯を残すことを第一に考えているということです。
検査をしてみて、歯を削るだけで歯を動かすスペースが確保できると判断できれば、もちろんそのプランを優先して提案します。
ただし、歯を削れる量には限界があります。それぞれの歯で作れる隙間は異なり、もし必要なスペースがその限界を超えるようであれば、非抜歯で進めることはありません。
「歯を削るだけで並ぶかどうか」は、お口の中を拝見しただけでは断言できず、精密検査を行って初めて判断できます。

そもそも「歯を削る矯正(IPR)」って何?

IPR ディスキング
IPRとは、歯と歯の間のエナメル質をやすりで削って、歯を動かすためのスペースを作る方法です。
「ディスキング」や「ストリッピング」とも呼ばれます。
削る量は歯の健康を損なわないよう、片側約0.1mm〜0.25mmで慎重に行います。
軽度〜中等度の歯のデコボコ、歯の形や大きさのバランスが悪く微調整が必要な場合、マウスピース型矯正で歯の動きをスムーズにしたい場合に行われることが多いです。

IPRが必要かどうかは検査が必要

当院では、主に以下の3つの視点から見極めています。

① 歯根・骨の余裕

福岡 裏側矯正 福岡 裏側 矯正歯科
歯は、歯槽骨(しそうこつ)という顎の骨に埋まっています。歯を動かすということは、この骨の中で歯の根を安全な範囲で移動させるということです。
もし骨の量が少ない、あるいは薄い場所へ無理に歯を移動させようとすると、歯の根が骨から飛び出してしまったり、歯ぐきが下がってしまったりするリスクが高まります。
IPRで作れるスペースには限界があるため、「非抜歯」にこだわって無理に歯列を広げると、このリスクを冒すことになりかねません。
当院では、歯科用CTを用いて、IPRで対応可能か、抜歯によって十分なスペースを確保する必要があるかを判断します。

② 歯並び・咬み合わせの全体バランス

歯並び アーチ状 U字
歯並びのゴールは、見た目の美しさだけではありません。上下の歯がしっかりと噛み合い、食べ物を効率よく噛み砕ける「機能的な咬み合わせ」を作ることが重要です。
例えば、デコボコを解消するためにIPRだけで歯を並べた結果、奥歯がしっかり噛まなくなってしまっては、歯の寿命を縮める原因になりかねません。
当院では、お口の中をスキャナーで精密にデータ化し、すべての歯が機能的に調和するゴールを設定した上で、そこに至るために必要なスペース量を算出します。

③ 横顔の調和

天神 矯正 Eライン
デコボコを治すだけならIPRで十分なケースでも、口元が前に出ている場合、非抜歯で治療すると歯列全体がさらに前に移動し、口ゴボが悪化してしまう可能性があります。
そのため、当院ではセファロ(頭部X線規格写真)というレントゲンを撮影し、歯と顎の骨格、鼻や唇、顎の先端といった軟組織の位置関係を分析。
横顔の美しさの基準とされる「Eライン(鼻先と顎先を結んだ線)」と唇の位置関係などを客観的な数値で評価します。

非抜歯?抜歯?症例別の大まかな目安

精密検査が必須であることは大前提ですが、ご自身の歯並びがどのケースに近いか、大まかな目安として参考にしてください。
選択 目安 どっち

【非抜歯寄りのケース】

  • 軽度の叢生(歯のデコボコ):スペース不足が2〜4mm程度と小さい場合。IPRや歯列の幅の微調整、前後のコントロールで対応できることが多いです。

【慎重な判断が必要なケース】

  • 中等度の叢生:スペース不足が4〜6mm程度の場合。IPRに加え、歯科矯正用アンカースクリュー(小さなネジ)を用いて歯を効率的に動かすなど、非抜歯を目指せることもあります。

【抜歯寄りのケース】

  • 重度の叢生・口元の突出改善が必要な場合:スペース不足が6mm以上と大きい場合や、出っ歯・口ゴボを根本的に改善したい場合。抜歯によって十分なスペースを確保することでより良い結果が期待できます。

マウスピース型矯正(アライナー矯正)とIPRの関係

マウスピース 歯列矯正
「マウスピース型矯正は歯を削ることが多い」と聞いたことがあるかもしれません。
これは、マウスピース型矯正の仕組みと関係があります。

マウスピース型矯正では、少しずつ形の違うマウスピースを交換していくことで歯を動かします。
その際、歯と歯の間に隙間がないと、歯が計画通りにスムーズに動いてくれません。
そのため、治療計画の段階でIPRを組み込み、歯が動くための「通り道」を計画的に作ることが多いです。

IPRで知っておきたい注意点

削る量は歯の健康を維持できる最小限にとどめるのが大原則です。
処置後は表面を滑らかに研磨し、プラーク(歯垢)が付着しにくい状態に整えます。
そのため、安全性の高い処置ですが、知覚過敏・虫歯リスクがあるため、処置後はフッ素入りの歯磨き粉を使うなどセルフケアが大切になります。

「抜歯=悪いこと」ではありません

大丈夫 問題ない
ここまで読んでいただき、「やはり抜歯は避けたい」という気持ちと、「もしかしたら自分には抜歯が必要なのかも」という気持ちの間で揺れている方もいらっしゃるかもしれません。
大切なのは、「抜歯=悪いこと」「非抜歯=良いこと」という二元論で考えないことです。
非抜歯にこだわりすぎるあまり、無理に歯を並べてしまうと、

  • 前歯が前に出てしまい、口元が突出する(口ゴボになる)
  • 歯が骨の器に収まりきらず、歯ぐきが下がってしまう
  • 噛み合わせが不安定になり、将来的に歯の寿命を縮める
  • 治療後の後戻りが起きやすくなる

といった、別のリスクを生む可能性があります。
抜歯は、これらのリスクを避け、お口全体の機能、横顔の美しさを手に入れるための合理的な選択肢なのです。

当院の矯正治療の流れと期間の目安

天神キュア矯正歯科 院長
天神キュア矯正⻭科では、納得した上で治療をスタートできるよう、以下のステップを踏んでいます。

カウンセリング

相談 カウンセリング
まず、患者様のお悩みや「こうなりたい」というご希望を詳しくお聞かせください。
「費用はどれくらい?」「治療期間は?」「目立たない装置はある?」といった、どのような疑問にも丁寧にお答えします。
この段階で、矯正治療の概要や考えられる選択肢についてもご説明いたします。

精密検査

天神 歯列矯正検査
治療をご希望される場合は精密検査に進みます。
レントゲンや歯科用CT、口腔内スキャナーで現在の歯並びを把握し、さらにお顔やお口の写真を撮影するなど、治療計画を立てるためのデータを集めます。

診断結果のご説明

歯列矯正 検査 診断
精密検査のデータをもとに、現在の歯並びの状態を分析します。
その上で患者様のご希望を踏まえ、治療計画をご提案。
それぞれのプランのメリット・デメリット、予測される治療期間や費用についても具体的にお伝えし、ご納得いただける治療法を一緒に見つけていきます。

治療開始

福岡 天神 矯正
治療計画にご同意いただけましたら、いよいよ治療のスタートです。
計画に沿って矯正装置を装着し、必要に応じて歯を動かすスペースを作る処置(IPRなど)を行います。
装置の取り扱いや日々のケアの方法についても分かりやすくご説明するので、ご心配いりません。

保定・メインテナンス

矯正 保定装置
歯並びが計画通りに整ったら矯正装置を外し、「保定(ほてい)」という段階へ移行します。
リテーナーを使用していただきながら、定期的な検診で噛み合わせなどをチェックし、美しくなった歯並びを維持できるようサポートいたします。

IPRでよくある質問(FAQ)

最後にIPRに関してよくある質問を紹介します。
Q&A 質問 歯列矯正

Q. IPRは痛いですか?

A. 歯の表面のエナメル質をわずかに削るだけなので、多くの方は強い痛みを感じません。処置時間も短く、振動を感じる程度です。

Q. どれくらい削るのですか?歯は弱くなりませんか?

A. 1本の歯につき、両側面を合わせても最大で約0.5mm程度です。髪の毛数本分ほどの、ごくわずかな量ですので、歯が弱くなる心配はほとんどありません。

Q. 歯を削れば必ず非抜歯で矯正できますか?

A. いいえ、そうとは限りません。IPRで作れるスペースには限界があるため、状態によっては抜歯が適切な治療法となる場合があります。

Q. マウスピース型矯正だけがIPRをするのですか?

A. どの矯正装置でも、治療計画上スペースが必要だと判断されればIPRを行うことがあります。装置の種類とIPRの有無は必ずしも連動するわけではありません。

Q. 天神キュア矯正⻭科は、相談だけでも大丈夫ですか?

A. はい、もちろんです。当院では、治療を始める前にじっくりご検討いただけるよう、カウンセリングの機会を設けています(要予約)。お気軽にご相談ください。

まとめ

歯を削る矯正(IPR)は、歯の側面のエナメル質をごくわずかに削ることで、抜歯をせずに歯を動かすスペースを生み出す治療法です。
費用や身体的負担の面から手軽に見えるかもしれませんが、IPRで作れるスペースには限界があり、全ての症例に適応できるわけではない点に注意が必要です。
抜歯は、より良いゴールを達成するための合理的な判断である場合も少なくありません。
「非抜歯=良い治療」「抜歯=悪い治療」と決めつけないことが大切です。
天神キュア矯正歯科では、矯正相談を行っていますので、歯並びが気になる方はお気軽にご相談ください。

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